私は1ヶ月弱の産前休暇と11ヶ月の育児休暇を取り同じ会社に復職した。そしてだいたい季節が一巡した。
育児休暇も残すところ4ヶ月になる頃、会社の担当部管掌役員より驚くべき内容の手紙を貰った。
内容の要約はこうだ。
『復職せずにこのまま復職予定の日をもって退職して欲しい。理由は、仕事も育児も満足にできるとは到底考えられないから。』
そして手紙の最後に、保身のつもりか、とって付けたような念押しの一言が腹立たしくも、悲しかった。
『再度申しあげますが、会社が決して退職を強要するものではなく、飽くまでもご本人のご判断に任せますので、誤解の無いように。お返事お待ちしています。』
Reikoさんは
大概の企業でそんなことを口にした日には、大きな問題になるはずだ。少なくともうちの会社だったら問題になる。
最低でも、セクハラだと厳重注意を受けることは間違いないだろうし、そう言われた女性従業員が労働基準監督局に相談にいったりしたら、会社全体がかなりヤバイことになるかも知れない。会社が被雇用者に対して子供を作るなと指示したなどと認定されれば、法的な処罰を受ける可能性もあるように思う。
と書いておられる。私は子供を作るなと言われたのではないが、子供がいるなら働くなと言われたのだ。私の会社も多分大概の企業のうちだと思う。しかし、会社全体がかなりヤバイことになるという事を、経営者側の人間が考えていないのだ。現実はこんなもの。
どこかにこの手紙を持って相談に駆け込もうとも思ったが、私が望んでいるのは戦いではない。復職であり、仕事を続け子供を持ちたいという事だ。
『復職させていただきたい』
と返事を書いて出した。
さて、もう一度働きはじめて
自分が納得いく形で働くことが、残業・出張・休日出勤をこなして働くことだったら、子育ては無理だと思った。子供は、持つだけで育てるのは他の人がやると言うなら可能かもしれない。しかし、1日24時間のなかに子育ての時間を満足いくだけ組み込みたいというのなら、今までと同じ生活では到底無理で、仕事と睡眠と家事と必要最小限の生活するための時間…例えばトイレに行く時間とかを差し引けば育児の時間はほんの僅かとなる。人それぞれの満足度は違うと思うが私の場合で言えば、育児の時間をもっと取りたかったので当然何かを減らさなければならない。睡眠時間を減らし、家事を手抜きにし、仕事も残業を極力避け出張には行かない。そうしなければ生活が前へ進まない。自分の納得いく形で働くというのは、ある程度の我慢や妥協をして、折り合いを付けた上での納得ということだ。
そして24時間の中に子育ての時間を設けるに当たり、やはり周囲の協力は欠かせない。夫の家事分担、祖父母の手助けは重要だ。そして勿論企業にも子育て中の社員の為の制度は必要だ。立派な規定集だけ作り、社員募集の要項に育児休暇ありなんて記しただけで終わりしてはいけない。利用しようとする者にもれなくイヤミが付いてきたり、母親失格だなんて手紙を書くなど論の外。
企業にとっては、育児で中断することなく働き続け、病気で休むことなく働き続け、親の介護で早退やら遅刻がなく働き続ける社員は、都合がよく便利でしょう。しかし、人生には、結婚して新婚旅行に行くとき、育児に追われるとき、病気で倒れるとき、老いた親の面倒を見るときがあり、人それぞれの都合や生き方があるのだから、それをきちんと抱え受け止めなければならない。しかし現実は理想とは遠く厳しい。
使える制度があまりに貧し過ぎるし、考えが古すぎる。ワークシェアリングや、育児の手助けとなる制度をもっと多様に設け、昔と違った生き方をする人を受け入れ、色々な形態の働き方があってしかるべきだと思う。そうなるにはどうしたらいいのか。労働基準局に駆け込むこと訴訟を起こすこと国の少子化対策も有効だと思うが、最も実質的で有効なのは、実際に仕事を持つ母親が日々働き、日々子育てをして実績を作っていくことでじりじりとでも掴み取っていくことだと考えている。